豊かな自然や独自の文化が息づく大洲市長浜。青野祠瑠(しげる)さんはフォトスタジオを営むかたわら、長浜で発生する自然現象「肱川あらし」の予報会のメンバーとして、肱川あらしの魅力を発信しています。大洲カンパニー肱川部肱川あらし課に所属する青野さんにお話しを聞きました。
ーー肱川あらしとは何でしょうか?
例年10月ごろから2月までに観測される長浜特有の風景で、大洲盆地で発生した霧と肱川から蒸発した霧が強風とともに肱川から海に向かって流れ出す現象です。日本各地から肱川あらしを一目見ようとわざわざ長浜に来る方もいます。今では鹿児島県の「川内川あらし」、兵庫県の「円山川あらし」と並んで日本三大あらしの一つに数えられています。
ーー肱川あらしの魅力を教えてください。
肱川あらしは日によって異なる表情を見せます。毎回形も違いますし、霧が濃い日があれば、薄い日もある。その日に見れない表情を写真に収めるのがおもしろかったんです。
肱川あらしが持っているエンターテインメント性も魅力の一つです。山の頂上にある肱川あらし展望公園から見ると緩やかに霧が流れているように見えますが、実際に近づいてみると暴風でとても寒く、大人でもその場で立っているのがやっとです。肱川あらしが発生するときには、風速20メートル毎秒を超えることもあるんです。
ーー肱川あらし予報会とはどのような会ですか。
予報会では私を含めた地元有志が数人集まり、翌日肱川あらしが発生するかを予想し、ウェブサイトやYouTubeで配信をしています。肱川あらしの発生確率はかなり低く、前日と当日の気温や山の見え方、星の出かた、潮の満ち引きなど、地元独特の知恵を用いて肱川あらしが発生するかを予想しています。
ーー肱川あらし予報会に入った経緯は?
会の立ち上げのときに、地元のカメラマンということでお声がかかりました。もともと人物を中心に撮影していたので、風景を撮影する機会はあまりなかったのですが、肱川あらしの撮影を始めてから、その魅力にはまっていきました。今では肱川あらしが発生するときには早起きをして撮影に向かったり、ドローンで撮影したりしています。
ーー青野さんにとって、肱川あらしはどんな存在ですか?
長浜で生まれ育ったので、昔から肱川あらしは暮らしの中にある日常の風景でした。学校へ登校する早朝、真っ白な霧のなか吹き飛ばされそうになりながら登校していたのを今でも覚えています。また、地元では肱川あらしが発生した日は快晴になって洗濯物が良く乾くと言われていたり、肱川あらしの恩恵で農作物が良く育ったりと、長浜の人たちは肱川あらしと一緒に育ったと言っても過言ではありません。
ーー活動の原動力はどこにありますか?
自分のふるさとを盛りあげたい、役に立ちたいという気持ちと、長浜の文化やコミュニティを次の世代に残していきたい気持ちが大きいです。私にも子どもがいますので、その子たちが地元である長浜で何かやりたいと思ったときに仕事や雇用があるという未来は守らないといけないと思っています。
ーー地域への思いがあふれていますね。
肱川あらしだけではなく、長浜の魅力自体も発信していきたいと考えています。長浜はすごく暮らしやすいエリアだと思っていて、海も山も川もある。海沿いなので夕日も綺麗で、水平線がまっすぐ見える場所に夕日が落ちるんです。そんな長浜の良さを伝えていけたらいいですね。
ーー肱川あらしでやってみたいことは。
肱川あらしを活用した体験プランも作っていければと思っています。昔はよく漁船に乗せていただいて、海の上からも肱川あらしを撮影していました。なかなか続けるのが難しかったので一過性のものになってしまったのですが、いずれ復活できればと思っています。
最近では「肱川あらし禅」プランというものにもチャレンジしています。肱川あらしの中で静かに座る。強風なので1〜2分しか持たないと思いますが、その後静かな場所に行くと禅の境地に近い不思議な感覚になるんです。そういった肱川あらしでしかできない体験プランを企画していきたいですね。
ーー大洲カンパニーの会員の皆さまへ伝えたいことはありますか?
ぜひ長浜に足を運んで、長浜や肱川あらしの魅力を肌で感じてください。そして長浜でおもしろいことや提案があればどんどん教えてください。そうすれば長浜のさまざまな方とつながって何らかの形にすることができると思います。ぜひみなさまと一緒に長浜を盛り上げていけるとうれしいです。
大洲で活躍するひとへインタビューしました。