井上陽祐一般社団法人キタ・マネジメントCMO、株式会社KITA代表

空き家再生で大洲の未来をつくる

生まれ育ちは大洲。大学、就職で“外”の世界を知る。総合商社のノウハウと“外の目”を活かし、大洲の古民家再生をリードしてきたのが井上陽祐さんです。大洲カンパニーでは不動産部空き家活動課に所属する、空き家再生のエキスパートに話を聞きました。

古い空き家に可能性を見いだす。

ーー古民家再生に取り組んだ理由は。

自分たちが暮らすまちの“いいもの”を残していこうと考えたとき、真っ先にあげられるのが大洲の古い町並みでした。古民家再生に観光産業の可能性を感じたのです。大洲のまちづくりで大事にしているのは、既存の町並み保存とは違い、「元の姿を“なるべく”残して活用する」というスタンスです。ビジネスという観点で古い空き家を改修し店舗にすることで“大洲モデル”を築いてきました。世界的な評価に加え、「発展途上国の参考モデルになる」といううれしい声も届いています。

ーー古民家再生にまちの活路を見いだしたのはいつですか。

高校を卒業してから県外の大学に行き、東京で働いていました。「臥龍山荘」や「大洲城」など、ずっとこのまちにあるものや古い町並みに魅力を感じたのはUターンしてからです。大洲市地域おこし協力隊になり、行政の立場で古民家再生に携わりました。仕事を通して故郷に向き合ううちに、古い町並みや歴史的資源が残る大洲に、観光地としてのポテンシャルを見出していきました。

30棟以上の空き家再生を手がけてきた井上陽祐さん

ーー5年間で、古民家再生数は35棟を超えました。 

スピード感を意識したというよりも、“明日崩れてもおかしくない”物件ばかりで急ぐ必要があったのです。古民家再生事業は、資金の調達や運用、リスク管理といったファイナンスの要素が強い。商社時代に培った、事業に投資してお金を回収していく経験を活かしながら、行政・民間事業者・金融期間の三者が互いにリスクをとって事業化を進めたことが結果、スピード感につながったのでしょう。

古民家再生で大事なのは、資金と物件です。われわれはそのどちらの問題もクリアにした状態で物件を用意しているので、現実感を持って古民家再生をやってみたいという人がすぐにトライできる素地を整えています。そうやってこれまでホテルやカフェをはじめ、いろんな店舗が町並みにできたことで、にぎわいが少しずつ生まれていきました。

ーー再生した町並みを生かし、企業研修も手がけていますね。

まちづくりを15年間やってきた経験や考え方を、企業に落とし込んでいくワークショップを提案しています。参加者が所属する企業が15年後生き残っていくために、何を持っていくか。いわゆるパーパス経営(自社の社会的な存在意義を明文化し、定めた存在意義に従って会社を経営すること)を学ぶ機会にする。その時間を非日常感のある大洲で体験します。今の時代、企業が求める研修内容を形にしたもので今後、大洲カンパニーのプロジェクトとして実施していきます。

大洲の古民家再生の目玉の一つ、「NIPPONIA HOTEL」

まちの未来と人をつなげる大洲カンパニー

ーー改めて、「大洲カンパニー」とはどんなプロジェクトですか。

大洲のまちづくりはこれまで、関係人口をつくろうと観光客を呼び寄せてきました。一度足を運んで終わり、ではなくてその後も関係性を保ち、交流を深めていく仕組みが大洲カンパニープロジェクトです。SNSを活用したコミュニティを立ち上げ、農業や肱川・古民家活用など、これまでのまちづくりを活かしたいろんなイベントを企画、開催していきます。観光客にも会員になってもらって、地域との関係性を未来につなげ、大洲のファンになってほしいと考えています。

ーーなぜ立ちあげたのでしょう。

大洲では毎年、人口が700〜800人ずつ減っている厳しい現実に直面しています。僕自身がそうだったように、大洲市以外に住みながらも大洲に関わりたい人はたくさんいます。またこれまで、世界的にまちづくりが評価されたこともあって過去3年間で600人ほどが視察や企業研修で大洲にお越しいただきました。残念ながら、その後も関係を続けられる仕組みがなかったのです。大洲に関わりたい人、一度来ていただいた人たちが大洲のファンになって何度も来ていただき、人口減少というハンディにあらがっていく。そのきっかけとして、プラットフォーム「大洲カンパニー」を立ちあげました。

「これやりたい」を待っています!

ーー「大洲カンパニー>不動産部空き家活動課」でやりたいことは。

これまで古民家で店舗を運営してくれた人のほとんどが、僕が「出店してほしい」と口説いた方たちです。思いをくんでくれた方たちに心から感謝すると同時に、今までのような僕と店主さんとの“ワンツーワン”の関係ではまちづくりの限界があるとも感じています。

大洲カンパニーの会員の方から“なり手”が育っていくと、もっと複雑でおもしろいまちづくりになる。そうやって「大洲はおもしろいまちだよね」という機運が広がっていけば、いろんな商売も広がりも生まれてくるはず。大洲カンパニーを通してそういう実証実験をやっていきたいです。

ーー具体的に思い描く活用法はありますか。

大洲カンパニーの会員さんと、おもしろい改修のやり方ができたらいいですね。たとえば、一人出版社をやっている方が出版会社を立ち上げて出版物を出したり、シェアキッチンみたいな形で料理人が次々オペレーションする仕組みだったり、これまでにはない空き家活用を一緒に作りあげていけたらきっと楽しいでしょうね。

ーーどんな方に関わってほしいですか。

僕たちが一方的にこれやりましょう、あれやりましょうではなく、積極的に大洲に関わり続けたい方に参画してもらえたらうれしいです。会員の方から勝手に「これやります!」「一緒にこんなことをやってみましょう」みたいな流れになっていくのが理想です。

まずはいろんなイベントを企画しているので、興味のあることで気軽に参加してほしいです。一緒に大洲を盛りあげていきましょう!

空き家を掃除をする大洲カンパニーのメンバー

井上陽祐一般社団法人キタ・マネジメントCMO、株式会社KITA代表

1986年大洲市生まれ。九州大学・大学院を卒業後、総合商社に入社。2017年、東京からUターンし大洲市地域おこし協力隊になり、古民家再生に取り組む。現在、一般社団法人キタ・マネジメント企画課係長・CMO、株式会社KITA代表。大洲カンパニー不動産部空き家活動課

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